命に関わる病気として知られている癌の一種ですので、その深刻さに応じた初期症状がありそうなものですが、実際には本人すらも気付かないうちに進行していくケースが多く、明確な兆候が出るのは悪化してからであるのが多いのが胃がんです。
しかし、胃がんには初期症状がまったくないわけではなく、お腹に不快感や違和感を覚えたり、食欲の低下やげっぷの頻度の増加といった兆候が存在する例もあります。
症状が進行していくと、そのほかに腹痛や血便、貧血、体重の減少、胸やけ、吐き気、腹水が溜まる、おならが増えるといった変化が出てくるケースが多くなり、これらが原因で病院に行ったところ、胃がんが発見されることもあります。
放置すると胃がんの症状は進行します。初期のうちに比べ、時間が経過すると末期に近づいていくことになってしまい、治療を行っても生存率が低くなっているので、そうならないように、早期発見する必要があるのです。
初期症状ならほとんど見られませんが、進行するとリンパ節や他の臓器への転移も進み、手術によって病巣を切除できなくなってしまうケースも出てくるので、変調をきたしたら早めに医師の診断を受けておきましょう。
胃がんのステージと生存率
症状の進行度を表す基準がステージ(病期)であり、治療後の経過の目安となるのが生存率です。どちらもあまり聞きなれない言葉だと思うのですが、胃がんと闘っていくために重要なキーワードとなるので、理解しておきましょう。
まず、胃がんのステージは症状がどの程度進行しているかを示すものですが、0期から4期までに分けられており、数字が大きくなるほど進行している状態となります。つまり、0期がもっとも初期の状態であり、4期がもっとも進んでいるのです。
ステージを判定する基準は、胃壁にどの程度深く食い込んでいるのか、リンパ節と他の臓器に転移している度合いによって、複雑な組み合わせによって決められています。
胃がんの生存率は一定期間が経過した後に、どれだけの割合の患者さんが生きていたかを統計的に調べたものです。当然ながら、初期の方と末期の方では事情が大きく異なるため、すべての患者さんの通算ばかりではなく、ステージごとに分けると有用な資料となります。
一般に生存率の期間は5年で表示されることが多いものの、症状が進行するともっと短い1年や3年が使われる場合もあります。
病院によっても具体的な数字は異なるうえ、治療法の進歩によって時代と共に変遷を重ねている部分もあるのですが、胃がんの5年生存率のおよその目安としては、ステージ1期で95%、ステージ2期で70%、ステージ3期で45%、ステージ4期で10%ほどです。
生存率を見ると、症状の進行によっていかに治療が難しくなっているかがよく分かります。ここからも、早期発見の重要性がうかがえるでしょう。
胃がんの治療
大きく分けると、胃がんの治療法には内視鏡による方法や手術、抗がん剤、放射線療法があります。この他にも、食事療法や免疫療法が存在します。
治療法は症状の進行度を表すステージや患者さんの希望などを考慮して決められます。効果に注目するのは当然としても、後遺症や合併症の危険、副作用といった負の側面についても忘れずに把握しておきましょう。治療中に副作用に苦しんだり、手術が終わってから後遺症に悩まされたりすることもあるので、そうした点についてもチェックしておく必要があります。
内視鏡治療
胃がんが初期症状の段階であれば、内視鏡によって病巣を切除できる場合があります。リンパ節転移がなく、深く浸潤していないことが条件となるため、適用できる範囲は限られているものの、体への負担が小さい方法です。
内視鏡は検査にも使われてるだけではなく、早期の場合なら癌を切除して治療にも使えるのです。一般的には、リンパ節転移の可能性がなく、大きさが2センチ以下の粘膜内癌に適用されるものとされています。
内視鏡治療においては、スネアと呼ばれるワイヤーを用いる内視鏡的粘膜切除術と内視鏡的粘膜下層剥離術があります。
同じ病巣を切るものとして手術があるものの、内視鏡治療は回復が早いために退院や社会復帰のタイミングが早い傾向にあります。
手術の方法と術後の後遺症・合併症
胃がんの手術は治療効果が高く、内視鏡による切除に比べて広い範囲の患者さんに適用できる重要な選択肢となっています。ただし、遠くのリンパ節や他の臓器に転移していると適用できないことが多くなるため、すべての方に使えるわけではありません。
手術の方法には開腹と腹腔鏡を用いるものがあります。開腹は従来から伝統的に行われていた手法で、一般的には20cmほどの切開を伴います。お腹の中の状態を観察しやすく、現在でも重要な方法です。
これに対し、胃がんの腹腔鏡手術は1990年代に始められた方法で、1センチ前後の穴を数箇所に明けて、カメラや器具を入れて切除を行う方法です。開腹の場合よりも切る範囲が狭いために術後の痛みが少ないことや、退院までの期間が短い反面、高度な手技が求められるため、腹腔鏡手術に慣れている専門医がいないと不安が残ります。
癌の位置によって切除する場所が変わるのですが、大きく分けると胃の出口の側を切る幽門側胃切除、入り口の側を切る噴門側胃切除、そして全摘出の3つがあります。
さらに、転移の疑われるリンパ節を摘出するリンパ節郭清を同時に行うことが多く、十分な範囲を手術の際に行わないと、胃がんが再発する原因になってしまいます。
手術は高い効果が期待できる反面で、合併症や後遺症のリスクもあります。術後の合併症として多いのは、膵液漏や縫合不全、肺炎、出血、腸閉塞、肺塞栓といったものがあります。膵液漏はすい臓の周辺のリンパ節を郭清した場合に多く起こるもので、すい臓からの分泌液である膵液が漏れ出すものです。縫合不全は消化管の結び目に問題のある状態です。
胃がんの術後の後遺症としては、胃の一部または全部がなくなったことによって生じるもので、食事に関するものが多くなっており、そのほかに胆石ができやすくなったり、鉄分やカルシウムの吸収が悪くなるといったものがあります。
食事に関する変化としては、これまでよりも食べられる量が減るため、回数を増やして栄養を補うことになります。手術を行うと、消化器官である胃が小さくなるため、このような後遺症が残ります。
術後の後遺症として深刻なものとして、ダンピング症候群があります。これも食事に関するものなのですが、胃で食べ物を以前のように溜めておけないため、急激に血糖値が上昇することに対応してインシュリンが大量に分泌され、今度は急激な血糖値の低下が起こるものです。これはダンピング症候群の中でも、後期ダンピング症候群と呼ばれており、脱力感や倦怠感、めまい、冷や汗といった症状が現れます。
これに対し、早期ダンピング症候群という術後の後遺症もあります。食事から2時間から3時間経過してから生じる後期ダンピング症候群に比べると頻度は少ないのですが、食後30分以内に生じるもので、糖分の濃い食べ物が腸に流れ込んでしまい、腸液やホルモンの急激な分泌が原因で動悸やめまい、眠気、断面蒼白、下痢といった症状が起こるものです。
早期ダンピング症候群は食事の時に水分を控えておくことや、後期ダンピング症候群は食事から2時間ほど経過してから間食を取ると予防できます。胃がんの術後の後遺症といっても、コントロールできないわけではないのです。
抗がん剤治療(化学療法)
内視鏡治療や手術、放射線療法は効果が対象範囲にしか及ばない局所療法です。たとえば胃がんの手術であれば切除した範囲以外には直接的な効果がありません。これに対し、抗がん剤は薬剤が血流に乗ることで、体中に効果が波及する全身療法です。
このことは、胃がんが転移した場合に大きな意味を持ちます。体の色々な部分に癌細胞が広がってしまっている場合には、抗がん剤を投与すると、それぞれの場所に効果を与えることができるのです。
なお、抗がん剤治療は化学療法とも呼ばれています。単独で用いるだけではなく、他の方法と組み合わせることも多く、術前や術後の補助療法として用いると、手術で取りきれなかった癌細胞を治療し、胃がんの再発を防ぐといった使い方がされています。
かつてはあまり効果的な薬が存在していなかったものの、ティーエスワンという抗がん剤が開発されたことによって、化学療法の効果が高まるようになりました。しかし、単独で胃がんを完治させるほどの結果は期待できないのも事実です。
抗がん剤の副作用は以前に比べると軽減される傾向があるものの、脱毛や吐き気、嘔吐、白血球や血小板の減少、全身の倦怠感といったものが代表的です。
放射線治療
脳転移や骨転移が生じている場合には、放射線治療を行うことが多くあります。残念ながら、脳や骨への転移を完全に焼失させるのは難しいものの、症状を抑えたり進行を遅らせる効果は期待できます。
胃がんの検査・検診
診断に使われる方法としてレントゲンや内視鏡検査、超音波検査、CT、腫瘍マーカーといったものがあります。これらのほかに、問診や視診を行うことになります。また、ペプシノゲン検査やヘリコバクターピロリ抗体検査によって、胃がんのリスクの大きさを測ることも行われています。
胃がん検診においては、バリウムを飲んでレントゲンを撮影する方法が使われています。簡単に行える方法ですので、無症状の方でも受診しておくことが望ましいとされています。レントゲンを撮影する方法は、死亡率を下げる有効性が確認されている方法で、検診の重要な手段となっています。なお、医療の進歩はバリウムにも及んでおり、以前よりも飲みやすくなる一方で、病変を見つけやすくなっています。
内視鏡検査は胃カメラとも呼ばれています。胃の粘膜を細かく観察できるほか、病変の組織を採取して顕微鏡で詳しく調べることもできます。なお、この組織検査は生検と呼ばれています。
以前に比べると、内視鏡がコンパクトになった恩恵もあり、内視鏡検査に伴う苦痛は小さくなっています。胃がんを発見するために重要な役割を果たしている診断方法です。
CTや超音波検査は画像診断の一種ですが、胃がんの転移の有無や範囲を調べるために使われています。対象となるのは腹膜やリンパ節、肝臓等で、腹水が溜まっているかどうかを調べるためにも用いられます。
腫瘍マーカーは血液検査の一種で、癌が存在するために分泌される物質を指しています。癌になると、腫瘍マーカーの数値が上昇するのですが、他の病気が原因で異常値になることもあり、残念ながら胃がんの早期発見には役立っていません。むしろ、再発の有無や治療効果の判定、症状の進行を判定するために役立っているのです。
ペプシノゲン検査も血液検査なのですが、胃粘膜の萎縮度を調べるものです。ここで判定の結果が出ると、胃がんになるリスクが高いため、検診を定期的に受けることが望ましいのですが、直接的に癌の有無を調べる方法ではありません。
ヘリコバクターピロリ抗体検査もまた、血液を調べるものです。これは、胃がんの原因となるヘリコバクターピロリ菌に感染しているかどうかを調べる方法で、感染していればリスクが高いものの、必ずしも癌になるわけではありません。なお、40歳以上であれば7割の方が感染しているので、特に珍しいわけではありません。希望すれば、ヘリコバクターピロリ菌を除菌することもできます。
早期胃がんと進行胃がん
胃の粘膜から発生した癌がどこまで浸潤しているかによって、早期胃がんと進行胃がんに区別することができます。2分するだけですので、ステージに比べると大雑把な分け方になります。
早期胃がんとは、粘膜や粘膜下層にとどまっているものを指し、転移していることはまれです。これに対し、進行胃がんは固有筋層やそれよりも深くに浸潤しているもので、転移の頻度も高まります。
胃がんの転移
癌細胞は一つどころにとどまるだけではなく、進行すると他の場所にも移って、そこで増殖します。これが胃がんの転移です。大きく分けると、血液を介する血行性転移、リンパの流れを介するリンパ性転移、腹腔内に種をまいたように広がっていく腹膜播種の3つがあります。
血行性転移は色々な場所に起こるのですが、頻度が高いのは肝臓や肺です。その他にも、骨や脳など、色々な場所に広がっていくことがあり、場所によってそれぞれに異なる症状が生じます。
リンパ節転移は比較的早くから生じます。胃がんの手術の際に取り除けるものから、遠くの位置まで広がってしまうことによって治療が難しいものまであり、位置によって予後は変わってきます。
腹膜播種はお腹の中に癌細胞が広がるもので、胃がんが進行すると多く見られます。その結果、腹水がたまることによって、お腹がカエルのように膨らんでしまうこともあります。
スキルス性胃がんとは
一般の場合と比べて悪性度が高いのがスキルス性胃がんです。症状の発見が遅れがちであり、見つかった段階で転移しているケースが多いのがスキルス性の特徴で、すでに根治手術の適用がない状態になってから診断されることが多いのです。
そのため、スキルス性胃がんは生存率が低く、完治させるのがとても難しくなっています。腹膜播種などの転移が進んでいることが多いために、抗がん剤によって進行を遅らせることはできても、治せなくなってしまっている例が多いのです。
また、スキルス性胃がんは比較的若い女性に多く、30代や40代で多く見られます。スキルス性の場合には、厳しい闘病生活になることが多い事実を理解して覚悟する必要があります。
胃がんの統計
2004年の段階で見ると、癌で亡くなった人の中で胃がんは女性において第一位、男性でも第2位の存在となっています。ただし、死亡率は下がってくる傾向にあります。年齢で見ると、50代後半から60代で多くなっています。
男女別に見ると、罹患率や死亡率は女性の方が高い性質を持っており、死亡数は罹患数の半数ほどとなっており、生存率は低くはありません。すい臓がんのように死亡者数と罹患数がほとんど一致する癌もあることを考えると、闘病によって良い結果が得られる希望も十分にあると言えます。
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